ピンポンは、素晴らしいアニメですが、思ったよりもマイナーな気がします。面白さを伝え、できる限り多くの人に見てもらえたら嬉しいです。卓球を通じた各キャラクターの人生について説明のみ、若干ネタバレがあります。
ピンポンというアニメ
漫画のタッチを活かしたアニメ
ピンポンは、松本大洋原作の漫画です。この漫画のタッチや漫画表現を活かしたアニメーションを作っています。以下に見るべきポイントを書いてみます。
一人の作家がきちんと構成している
シリーズ構成から脚本まで監督の湯浅正明が行っている。そのため、各話でのセリフが後半の状況に活かせたりします。
シンプルで誰にでもわかり易い
星野と月本という高校生を中心に、卓球を通じてそれぞれの人生があることを描く青春群像劇です。また、登場人物は多くない、それぞれのキャラクターがいい味出しています。
アニメーションの表現
漫画表現のアニメーション化
松本大洋の絵をできる限り活かした作画にしようと心掛けています。なので、背景もよくあるアニメーションの綺麗な背景ではなく、漫画の作画のレベルに合わせています。
さらに、コマを割る表現を使うことで、見せたいものをリズムよく見せることに成功しています。
心象を表現することが重視なので、遠近法などはしばしば無視されています。それを気にしてはいけません。むしろ、その心理的描写を楽しんだ方が得です。
コマ割り、集中線、流線などをアニメーション化しています。また、矢印や軌跡などもアニメーションとして面白いです。
キャラクターを象徴するもの
これについては、アニメオリジナルではなく、漫画原作のアイデアです。
ペコがラケットの手を持ち換えたりしながら楽しく卓球をするシーンがあります。こうやって、ペコの性格を描きます。
月本の卓球のシーンでは、数字やメーターなどエフェクトが出てきます。
また、キャラクターを象徴するものが、服やラケットについていて可愛いです。星野は、【星】☆。月本は【月】。小泉先生は【蝶】。佐久間は【悪魔】。風間は【龍】です。逆に、この象徴がつかないキャラクターは、サブキャラ未満のキャラクターです。
アニメーションのシナリオ
卓球・神奈川県のインターハイの2年間で完結している。
このお話は、1年目のインターハイ予選に始まり、2年目のインターハイ予選で終わる。世界大会や、インターハイなど物語に関わらない無駄な試合は書きません。
漫画・アニメで高校生スポーツ物を作る場合、一つ一つの試合を盛り上げようとするために、だらだらと試合をする傾向にあり、これがないことは物語を引き締めています。
シナリオ構成
1話1話がシンプルな構造になっています。OPでこれから試合をするぞと盛り上げる映像。EDでは、湘南をただただ車で流していく情緒的な映像。話の流れもOPから始まって感情が爆発し余韻を残す。そんな構成になっています。
また、1話の前半と後半で一つイベントが用意されています。キャラクター一人又は二人のイベント。または、イベントがあり、各キャラクターの違いを示します。
卓球を通じて描く人生
各キャラクターが卓球を通じて、自分の人生と対話します。それぞれが、違う形(想い)で卓球と向き合っていることがわかります。
アニメーションの演出
卓球の音とリズムを楽しいアニメーションにしている。
卓球の球は軽くそのはずむ音もまた軽いです。これが一定のリズムで軽快にラリーされることで、作品のリズムもテンポにも活かしています。
エンディングに入り方が絶妙
最後の悲哀や決意、そのタイミングで入ってくるエンディングテーマは最高です。
各キャラクターの紹介
ピンポンは、キャラクターの造形がわかり易いです。名前がキャラクターの設定を表しています。
星野 裕(通称 ペコ)【象徴 星】
ペコは、お菓子が好きで、いつも何でも楽しもうとします。名前の通りヒーロー(星)を目指します。
月本 誠(通称 スマイル)【象徴 月】
スマイルは、感情を見せることが少なく、ロボットだと思わせるようなことが多くあります。彼の感情を示すものは、ゲーム(原作ではルービックキューブ)をしている。あるいは、ヒーローの歌を歌います。また、冷静に卓球をするとき、ロボットの効果音がなります。
象徴としての月のように、星の輝きに照らされ輝く存在です。
風間竜一【象徴 龍】
風間は、常に1番であることを求められるボスキャラ的な存在です。彼は、他人に何を言われても黙っています。彼にとって大事な物は【花】です。花にまつわる言葉、花に係る物が象徴的にシーンに出てくるので注意してください。
佐久間学【象徴 悪魔】
佐久間学は、悪魔ではなく、学の方が性格を表しています。研究熱心、一生懸命です。
悪魔については、風間に関するセリフに色々な感情が出てきます。
孔文革 コン・ウェンガ
コンについては、象徴とするようなところはありません。ただ、人間関係の変化と心境の変化が重要なキャラクターです。
江上(えがみ)
他のキャラクターのストーリーとは、一切関係ありませんが、卓球と人生を向かい合わせるという意味で非常に重要なキャラクターです。
比較作品
ハイキュー!!
ハイキューは、通常の書き方のアニメーションとして、スポーツの動きを綺麗に書いたアニメーションです。また、青春群像劇としても比較の対象となります。しかし、その人生に関する重みの付け方、シナリオの構成など、ピンポンが優れているように見えます。比較してみると面白いと思います。
四畳半神話大系
同じ湯浅監督の作品として、面白い作品なのでこの作品の雰囲気が好きであれば合わせてみていただけると良いと思います。
卓球への考え方【ネタバレ含む】
この作品での卓球は、主に3層に分かれています。
卓球が好きで無くては生きられない人生
ペコ 星野 裕太
ペコは、作内で卓球から一時離れようとしますが、恋愛にも身が入らず、ただ無為に時間を過ごします。
江上
最初に月本に負けて卓球をやめます。海のバイト、山、海外を放浪。卓球が好きだということに気づきます。
ペコと違う卓球が好きな存在として対比となる存在です。
卓球を手放せない人生
風間 竜一
自らの父親が事業で失敗した、社会のなかでは強くないと人を支えられないことがわかった彼は、みんなを支えるために孤軍奮闘し、人に恨まれながらも黙って、耐え忍び活動します。
対比としての真田は、まわりの人に好かれようとするも、目先の利益や目先の関係にとらわれているキャラクターです。
最終回で卓球だけの人生なんて嫌だよと言っているときの方が幸せそうですね。
コン ウェンガ
コンは、卓球で家族を幸せにする。負けたとしてもこれを無くしては生きていない存在です。家族や、高校の仲間を背負っている意味では、風間と同様の存在です。
卓球は人生の調味料
スマイル 月本 誠
スマイルは、卓球よりも小泉先生との関係。ペコと卓球をする時間を大切にしています。最初は、ペコのみが人間関係、次に小泉先生が加わります。この二人をつなぐ関係の象徴として卓球です。
悪魔 佐久間 学
悪魔は、憧れに追いつくために卓球をします。ショックなことは、風間やペコに追いつけないことを理解するときです。卓球をやめることもできる存在です。
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