Fukushima50の映画批評

引用:Fukushima50HPより

少し政治色強くて見ることを迷っている方へ

Fukushima50は、話題・原作者とも、政治色が強く少し見るのにためらうかもしれません。しかし、この映画はそこまで政治色が強いわけではなく、どちらかというと東日本大震災を通じて日本人の素晴らしい側面を見せる映画です。

以下、おすすめのポイント、内容、日本映画のダメな理由を書いています。個人的に見てほしい映画ですが、素晴らしい映画なわけでもありません。というわけで、この記事が皆さんの参考になったら幸いです。

最後の項目の日本映画がダメな理由には、ネタバレがありますのでご注意ください。

おすすめポイント

(1)俳優

渡辺謙と佐藤浩市の両俳優をそろえたのはすごい。そして、渡辺謙がとくに素晴らしい。

(2) 製作費

福島原発の再現が素晴らしい、福島原発って。そのため、絵がとてもかっこいい。こんなに広大な施設だったんだということがわかります。

(3) 東日本大震災について考える

今年で東日本大震災から9年になります。そろそろ、その記憶も薄れていたころ、あらためて冷静に思い出す機会と思います。

 

Fukushima50の内容

東日本大震災が起こり、津浪の被害で多くの人が犠牲になりました。それと同時に福島原発が暴走し、東日本に人が住めなくなるような可能性がありました。

現在の日本の状況は、東電の現場職員の命をかけた奮闘によって維持されたものです。

本作は、佐藤浩市が原発の現場指揮官として、渡辺謙が現場の最高責任者として所長を演じこの奮闘を描いたドラマです。

 

日本映画の悪さ(ネタバレ含む)

Fukushima50は日本映画の悪い面を考えるのに、ものすごいよい教材だと思います。悪いところは悪いと指摘し、良作が多く生まれることを望みます。

(1) 俳優と演技指導の実力不足

この映画は、現実の事件であることを歌う映画です。しかし、この作業員等は、美男美女揃い、彼らの多くは叫び泣きむせぶのです。事実として書くならかっこ悪いおっさんを演じようとしていた渡辺謙のみが正しく、逆に言えば、それ以外の大半が間違いだと思います。

あんまり日本映画を見てない私が言うのも難ですが、日常の演技ができないのは致命的と思います。

(2) シナリオ・演出のセンスや技術のなさ

同じことを言いますが、この映画は現実の事件をとり扱っています。しかし、映像演出によって、恰好良さやお涙頂戴を演出してしまおうとして、現実感を損なっています。原発事故が起こった最初に原子炉を見に行くとき、倍速で視線を進め視覚的効果で気分の高揚を狙うようなカットがあります。これは、コメディタッチの作品で使うような演出であり、センスのなさが著しいです。

次にシナリオと合わせた演出について話したい。まあ、あからさまカットバックで家族を見せ、お涙頂戴にします。もう、この演出方法は勘弁していただきたい。

原子炉の中では、常にある死の可能性、もう家族と会えない可能性があります。だから、結婚指輪一つにえらく思い入れをして、外すかを考えてしまいます。それが優れた演出かわからないが、そこを工夫するのが映画作家の矜持なのではないでしょうか。

(3) 政治的無知と描き方の浅さ

原作は、わりとネットでいう右よりの言説のある人の作品です。だから、原作もそうなのかもしれないが、ただもう少し総理はどんな状況で現場視察に行くのか、本店はなぜ吉田所長に無茶をいうのかを描くべきじゃないでしょうか。

勧善懲悪の漫画映画ではないのだから、無駄な家族シーンを廃し、社会構造の複雑さを描くのが大人だろうと思います。

 

結論、俳優が叫ぶだけ、やたらとお涙頂戴、社会的な複雑性が描けません。この辺りが日本映画の欠点だと私は思います。

 

この作品の背景

(1) 原作者

原作者の門田隆将さんは、最近よく右翼系政治Youtubeチャンネルに出演されているノンフィクション作家です。

元々、週刊新潮の記者で、日本の裁判の異常さ、野球業界、第二次大戦では根本中将などを描き、本作は原発事故で吉田所長を書いています。

(2) 吉田調書をめぐる事件

1 吉田調書

吉田調書とは、福島第一原子力発電所の所長である吉田昌郎氏の事情聴取による報告書で、政府、本店とのやりとり苦悩が書かれていました。本人の上申もあり非公開となっていました。

2 朝日新聞

吉田所長の死後、朝日新聞は非公式に入手した吉田調書を勝手に公開しました。しかも、内容は東電職員の650人が命令違反で逃げ出したというものでした。

3 朝日新聞への反対意見

門田隆昌氏や産経新聞から朝日新聞に、デマを流布する日本人の信用を貶めるものとの批判がありました。

4 その後

朝日新聞は誤りを認め、謝罪することになりました。

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